四角い乗り物

 あまりの雪の酷さで、昨夜は車で15分の距離を2時間半かけて帰宅した。今日も同じ目にあいたくはなかったので、電車で会社に向かうことにした。勤め始めて7年経つけれど、電車通勤は初めてだ。

 誰も雪かきをしないので、アパートの駐車場には真新しい雪がうず高く積もっている。会社に向かおうという意思を根こそぎ奪い取っていくような光景である。足を踏み入れるとひざ下くらいまで埋まってしまう。エンジニアブーツを長靴代わりに履いて出た。

 物好きな人たちが、朝早くから道路に出て雪かきをしている。「趣味の雪かきみたいなものです」という、村上春樹の小説の一節を思い出した。文化的雪かき。僕の後ろを歩いていた人が早足で追い抜いていった。どうしてそんなに急ぐ必要があるんだろう?

 今から仕事に行くというのに、僕の首にはカメラがぶら下がっている。いつもとは違う通勤路で、車ではなく徒歩で駅に向かっている。普段出会わない人とすれ違う。いつもと違うコンビニに立ち寄り、いつもと違う昼食を買う。そういえば彼女は、早朝のコンビニが好きだと言っていた。

 バカみたいに四角い形をした乗り物に、皆申し合わせたかのように同じような表情で詰め込まれ、行き場を失ったアリのように運ばれ吐き出されて1日が始まった。